プロフェッショナル達をコントロールする、現場の司令塔

プロフェッショナル達をコントロールする、現場の司令塔

人が健康診断をするように、日々私達が利用している建築物なども長く健全な状態であるためには、人と同様に診断が必要となる。

阪急電鉄「西京極駅」から、京都市右京区の南北メインストリートとなる葛野大路通り沿いを北に10分程歩いた所に位置する有限会社スギテックは、そんな建物の健康診断とも言える建築物の劣化の調査や、治療となる改修を行っている会社だ。

業界で言えば建設業界となるが、建築物を建てる仕事ではなく、既に建てられた建築物の性能や健全性を守っていく仕事にあたる。

建物の調査だけを行う、建物の改修だけを行う、それぞれ片方の業務を専門に行う会社は多いが、スギテックのように全てをワンストップで担っている会社は少ない。

有限会社スギテック京都本社
京都市右京区西院西田町94にあるスギテック京都本社

今回、そんな建物の健康診断から治療となる改修工事を行う業界で、現場の陣頭指揮をおこない業務をスムーズに進める役割を担う施工管理の仕事を紹介する。インタビューしたのはスギテックの工務部に所属する早川 岳志 氏だ。

現場においては、実際の施工で手腕を振るう職人の技術も重要なのは勿論だが、そんな職人達を指揮しひとつにまとめ上げ、無事に工事を完了させるまでを担う施工管理者の存在が重要となる。施工管理の腕次第で現場の流れのスムーズさは大きく変わってくる。

具体的な業務としては、施工計画の策定から原価管理、安全・品質管理、工程管理、人員の手配など多岐にわたる。計画通りに工事を進めるためには目の前の業務にとらわれることなく、全体を俯瞰し管理することが重要となる。

この全体の管理が疎かになると、当初のスケジュール通りにならなかったり予定予算をオーバーしたりといった事態になる。

流動的な現場で全体をまとめる非常に重要な役割を担っている早川氏に、この仕事について考えていることを聞いてみた。早川氏は異業種の営業職から転職し、未経験の状態からスタートしているという。

仕事前の朝の朝礼

ー仕事内容と大体の1日のスケジュールについておうかがいしてもよろしいですか

「今は施工管理者(現場代理人)として、建築現場の管理をしています。仕事場となる現場では作業内容や安全の指示を行ったり、時には職人さんの簡単な作業を手伝ったりすることもあります。

大体の1日のスケジュールは、午前8時に現場に出社し業務開始。昼休憩を1時間挟んで、午後19時には退社。という流れです。現場が遠方の場合は直行・直帰の形を取らせていただくこともあります。」

-専門的分野である印象ですが未経験でも施工管理の仕事はできるのでしょうか

「そうですね、建築物の改修は専門的な分野の仕事になりますが、まったくの未経験からでも現場で知識や技術を身につけながら一歩一歩進めることで施工管理者としての仕事はできます。日々勉強して吸収する姿勢があれば未経験でもあまり関係ないですね。」

-それは技術職ではなく管理職だからでしょうか

「当然現場の施工は専門技術者である職人さん達が行いますので僕が出る幕はありません。あくまで現場の進行を指揮する立場なので管理職だからできているという部分もあるでしょうね。でも作業の安全指示を行ったり作業を手伝ったりすることもあるので、職人さん達の作業に全く無関心という訳にはいきません。」

技術的なスキルが要求されないことから未経験でもできる範囲には入るが、現場全体を指揮し管理していく立場だからこそ知っていなければ当然指示はできない。幅広い知識を学ぶ姿勢が重要だ。

打診調査

-以前は営業職だったそうですが何か役立つ部分はありましたか。

「現場では職人さん、協力会社の人とか、色んな人と協力・連携しながら仕事を進めていくので、自分よりもかなり年上、年下の人もいれば立場の違う人もいます。

そういった方々に意見を伝える必要があるという点では、営業職で同じように幅広い年代や立場のお客さんと日常的にコミュニケーションを取っていたので、その経験は生きているんじゃないかと思います。

まあ元々人と話すのは好きというのもあるかもしれませんね、全然苦じゃないんで。」

この業界に入って3年目となる早川氏。前職では長らくの営業職経験もあり他者との円滑なコミュニケーションは得意だという。様々な人が関わってくる施工管理にはそのコミュニケーションスキルも重要な要素のひとつであり、その経験が生きている。

指差し呼称

-施工管理はコミュニケーションが大事と聞きますがコミュニケーションをどう捉えていますか。コミュニケーションが苦手という人もいますが、施工管理の仕事にそれが影響すると思いますか。

「よくコミュニケーションが得意な人と言ったら、人を和ませたり楽しませたりするのが得意な話し上手な人、みたいな漠然とした認識があると思うんです。

でもコミュニケーションって、相手に対して正しく自分の思いを伝えることと相手の思いも正しく受け取る意思疎通のことだと思ってます。これはもう得意不得意というか、誰でも仕事をしていたら既に当たり前にやっていませんか?」

-確かに人と一緒に仕事をするには意思疎通ができていないと上手く進みませんね。

「そうでしょ?細かい事を言えば簡潔に分かりやすくとか伝え方の上手さとかはあるかもしれませんが、大事なのはお互い正しく意思疎通ができているかだと思いますよ。和ませたりするのはサービス精神みたいなもんです、営業する訳じゃないんで。」

「ただ自分だってそうですけど、誰でも仕事をしていると色々なことが起こりますし、みんな人間なので体調が悪かったり機嫌が悪かったり、そんな日もあります。

そんな時に一時の感情に振り回されていい加減な対応をしたりせず、相手の気持ちも汲み取った上で、思いやりのある意思疎通を心掛けています。何も特別なことなんてないです。そんな当たり前のことを当たり前に、の意識が大事です」

円滑なコミュニケーション

仲間と仕事を円滑に進める上で意思疎通は切っても切れないもの。それを当たり前に行うことがコミュニケーションの基本だと早川氏。

思いやりのある意思疎通というのは、一方通行ではなくお互いが尊重し合う相互の意識が大事であると考える。

自分の気持ちだけでは成立しないが、自分が変わらなければ相手が変わることもない。ならば自分が変わることで相手を変えてみせる。早川氏の発言からそんな意思が垣間見えた。

日々の経験からの学び

-施工管理をする上で日々心掛けていること、大事だと考えることは何ですか

「まず僕自身は、まだまだ経験も浅いんで当たり前ですが、日々学んで知識などを積み重ねていくこと。そして現場で一緒に働く仲間となる職人さん達に対しては敬意を払う。

誇りを持ってやっていただいてますので大事なことです。彼らがいないと仕事になりません。よく、指示をする方が立場が上だ、みたいに思ってる人がいるみたいですが、どっちが上だ下だとかそんなのは無いですよね。」

-動いていただく人に敬意を払うのは大切ですね。それでコミュニケーションの取りやすさも変わってくると思います。

「後、指揮をする立場の人間として自分の判断や発言に自信と責任を持つことも大事です。作業を行う職人さん達は僕以上に現場を知っていますし仕事の流れを見ていると思うので、不安にさせないというのは管理者として大切なことだと思います。

後は早めの段取り。工期が迫ってきてからバタバタするのは品質にも関わってくるので。」

共に現場を納めるまで協力していく仲間。実際に作業を行う技術者はこれまで様々な現場を経験していることから、全体の流れや施工管理者の仕事ぶりをよく見ているという。

彼らからすると自身の作業に関わってくるため当然のことかもしれない。いい加減な管理をしていると彼らからの信頼も失いかねない。

職人との確認

-これは包み隠さずお聞きしたいのですが、施工管理の仕事の嫌な部分、大変な部分はどういう所ですか

「全然隠すつもりはないですよ笑 そうですね、やっぱり作業途中での変更があったり、職人さんに急なお願いをしなければならない時は、ある程度仕方ない部分はあるにしても気を使いますし、ああ…大変やなと笑

現場にもよりますが天気にも影響されやすいので、雨が降ると作業ができなくなる日も出てきます。そうなると必然的に別日で埋め合わせる必要があるのでお願いするしかなくなるんです。

こればかりはどうしようもないんですよ。休日出勤もやむ無しです。でもスギテックではしっかりと代休を取らせて頂ける環境なので気になることはないですね。

後は、単純に夏場冬場は外の現場は大変とか、事務作業が地味に時間がかかって大変だとか、作業での細かい事もまあ色々とあります。」

現場以外にも事務作業も

-それでもこの仕事を続けているその魅力はどんなところでしょうか。

「自分の関わった建物が綺麗に改修されることでその建物はまた10年20年と活用されていきます。建築ストックの維持保全という面で社会貢献できていることを実感できるというのがひとつ。

後はやっぱり達成感ですね。自分達で決めた目標(予算や工期等)を達成できた時には、この仕事の楽しさを感じます。予定通り何事もなく進むことの方が少なく、臨機応変に対応していくという面では、ある意味やりがいしかない仕事なのでそれを求める人には向いていると思いますよ。」


インタビュー後記

施工管理の仕事は思わぬトラブルが発生しスケジュール通りにならない可能性もある。時にトラブルが原因で工期を守るためには、作業者に別の日で穴埋めをお願いしなければいけない事もある。常に順風満帆ではない大変さがあるが、それと同時にやりがいのある仕事でもあると早川氏。

現場の指揮官として自分の立てた目標を仲間とともに達成する充実感。そして自身の関わった建物が持続して活用されていくという喜び。「地図に残る仕事」という大手ゼネコンのキャッチコピーがあるが、この仕事は「地図に残し続ける仕事」と言えるだろう。

2021年2月18日(火)
取材・撮影:藤川 拓哉

会社名
有限会社スギテック
募集する職種
施工管理アシスタント 

※募集は終了いたしました。
その他の情報

スギテック公式HP:https://www.sugitec.net/