ミヤコパンダ 店主:池田 景さん
今回のインタビューは、宇治市宇治山本にある「INCENSE KITCHEN(インセンスキッチン)」の店主である後藤 恭子さんにお話をうかがった。 同店では、日本の伝統模様などで形作られた、まるで美しい和菓子のような宇治抹茶を使ったお香「いとをかし香【抹茶】」等の制作・販売、また、お香づくりの体験教室を開催している。
ちなみに「INCENSE KITCHEN」と「いとをかし香【抹茶】」は、クールジャパン海外需要開拓プログラムの「TAKUMI NEXT 2021」の採択事業者・商品として選定されている。そんな「INCENSE KITCHEN」店主の後藤 恭子さんが、この事業をはじめるきっかけとなった事柄や今後の展望などを語っていただいた。
-それではインタビューの方をさせていただきたいと思います。本日はよろしくお願い致します。まずはですが、後藤さんがこのINCENSE KITCHENでお香作りをやっていこう、と思ったきっかけ・経緯を教えていただいたもよろしいでしょうか?
はい。今は私も宇治市民なんですが、元々は宇治の隣にある城陽市の育ちなんです。でも他府県のお友達に「城陽の出身だよ」と言っても、なかなか知名度的に通じない所があったので、もう「宇治の出身」という風に言ってました(笑)。それでお友達が遊びに来たときに案内をするんですが、大体の案内コースが宇治の平等院に連れて行き、抹茶スイーツを食べてっていうコースで、まるで自分の故郷のような感じで案内をするのがすごく私の楽しみでもあったんです。
私は仕事を通じて観光業界にも何年かいたものですから、おもてなしをすることだったり、お友達が楽しんでくれるのも嬉しかったですし、自分自身も楽しかったので「こういうのっていいなー」というのがずっとあったんです。宇治も好きだったので。
それである日、小さなお子さん連れのお友達が来た時に、いつもの観光コースを案内できなかったので、お子さんが楽しめるような宇治運動公園に連れて行ったことがありました。その時に私自身が「何か折角の宇治なのに、もっといい所を、お子さんにも分かってもらえて、もっと楽しんでもらえるような、そういうものがあったらいいのにな」と感じたのがまず最初のきっかけです。
そこから、当時私の娘が幼稚園児だったんですが、ちょっとお香作りから離れますけれど、おたべ(八ツ橋)の手作り体験にはまってた時期がありまして、おそらく12,3回は友達をかえては娘に連れて行かされたっていうのがあって、そこで「こういうのが家で出来ればいいな」と思って。そのおたべ作り体験が、私が趣味でやっていたお香作りにも似ていたので「お菓子作りはできないけどお香作りだったら出来るな」と。そこに地元の名産のお抹茶を入れて作れば、観光客の方にはお抹茶入りのお香作りって結構いいお土産にもなると思いますし、その作る時間も楽しいので「こんなのを作ってみたいな。こういう体験をやってみたいな。」って思ったのが最初の始まりです。
今商品としてお抹茶のお香を売っていますが、最初は「お香作り体験を提供したい」という想いから始まったので、その前にまず商品化だなと、ちょっと遠回りにはなったんですけども、それでお抹茶のお香という商品ができたので、少し後になりましたが、お抹茶入りのお香作り体験っていうのが今の形になったという、そういう経緯になります。
-ありがとうございます。後藤さんのお店では体験をするっていう部分と、お香に関わるプロダクト的な物の開発、その2つの軸があると思うんですが、そういった何か新しくこれをやってみよう、という着想はどういう経緯で生み出されるのでしょうか?
一般的にお香づくりっていうと、京都でもたくさんのお香屋さんがあってお香作りはされてるんですけれども、お抹茶を使ったお香って考えた時に、まずお線香のように火をつけて香りを出すお香っていうのは良い香りがしない。煙の匂いだけなのでそのお香は駄目だなと。次に匂い袋のような常温でも香るお茶っ葉で試したりもしたんですけど、なかなか良い香りというまでにはならなかったので「あぁ無理なのかな…」と。
そう思った時に、私は茶香炉も好きでよく焚いてたんですが、茶香炉で燃やさず常温でもなく、ちょっと温めて燻すような、焙じるような感じにするとすごく良い香りがします。そしてそこからもうちょっとヒントがあるんですが、印香という粉末を型で固めて作るお香がありまして、その印香も茶香炉のように間接的な形で熱で温めて香りを出すんです。
じゃあその形で開発してみようという流れになり、お香の粉末を扱ってるメーカーさんに「こういうものを商品化したいんですけど」と相談に行きアドバイスも頂いて、自分でもタブ粉というお香の元となる粉末を調合したりして抹茶の香りを邪魔せずに、でも形作るのに丁度いい配分などを試行錯誤し商品化しました。
普通のお香って香りを楽しむのがメインですけれど、お抹茶なのでちょっとお茶菓子風の見た目も面白いなと。で、印香自体が結構形でも個性を出せると言うか、面白く色んな形ができるので、どうせならお茶菓子っぽい方がいいなっていうことで、お菓子の木型を使って形を作るっていうのも思いついたのですが、これがなかなか木型からうまく剥がれてくれなかったり、ぺちゃっとしたりで…。
お干菓子の型がちょっと大きかったりするんですが、最初はそれで作ったら全然香りがしなくて「大きいからちょうどいい熱にならないんだ。」と思って火を強くすると逆に焦げちゃったりして…。そこからもう少し大きさを調整しながら低い温度、ちょうどいい温度でも香りが出るっていう所に辿り着き、今の大きさになったんですけど、お干菓子用のサイズと比べても、お香用のサイズはだいぶ小さめに職人さんの方に作ってもらって、それで今の形があるという感じですね。
今はお抹茶だけなんですけれど、秋の季節に私はほうじ茶を飲むのが好きなので「ほうじ茶のいとをかし香」とか、あと「お煎茶のいとをかし香」とか、一応はお茶がメインなんですけれど、お抹茶以外の香りのお香の商品開発も今後はできたらいいなと思ってます。
-ありがとうございます。次の質問ですが、実際に後藤さんがこれまでをお会いしてきている方でもいいですし、どのような方から影響を受けて、今のご自身に繋がっているのか?また、今ご自身が大事にしてることだったり、そういうものがあればお聞かせいただいてよろしいでしょうか。
いきなり新しい切り口ですね(笑)
-そうですね(笑)。お香作りはご自身が趣味でされていたとお話されていましたが、今まで全く別のことをされてきていた中で、今に至る背中を押すきっかけになったターニングポイントがあったのかな?というのが気になりましたのと、今色んなところにチャレンジングされてる姿勢を見て、何かそういう影響を受けたことがあったりされるのかなと率直に思いまして。
なるほど。今まで私の周りには自営業の人もおらず、サラリーマンだったり私の親も公務員ですし、私自身も会社員をやってきていたので、自分でこういう風な事業を始めるって言うのはあまり想像がつかなかったんですけれど、でも色んなご縁があって今の宇治の家に越してきたというのがあります。
私は城陽の育ちは長かったんですけれど、結婚前はあちこちを転々としていました。結婚してからも主人の転勤とかで転々としていまして、逆に城陽から離れてる期間も同じぐらいあったんです。それで出産のタイミングで同時に「地元に帰れる」となった時に、主人の母方が宇治の茶農家をしていたんですが、家をどこにするかって探してたら、その主人の母方の昔茶畑のあった近くの土地がちょうど分譲してて、何かご縁を感じたんです。ちょうど源氏物語ミュージアムの近くになるんですが。
-そうなんですね。
はい。それでそこに家を建てることになって、好きで憧れの宇治で住めることになった。きっかけは主人の方とはいえ、ご縁のある土地に来たので「あ、なんか宇治に来る運命やったんかな。」ってちょっとそんなことを感じたりしたんです。
それで娘が生まれてからは、よく乳母車を押して源氏物語ミュージアムから、さわらびの道を通って宇治川通って、また京阪宇治駅の方から帰ってくるっていうコースを歩いてて、「あんた、こんな場所が生まれ故郷ってええなぁ」みたいな感じで、すぐ近くに大吉山あったり平等院もあったり「ええとこで育つなぁ羨ましいなぁ~」と娘に対して思いながら乳母車押してました(笑)。
でも私もこれからは宇治の人間として生きていくんやな~と思うと、なんか今までは仮の宇治人として色んな人に紹介してたのが、本当の宇治の人として地元を紹介できるっていうのがすごく嬉しくて。友人にも「いいところに住んでるなあ、すぐそばにこんないい場所があっていいなあ」って言われたのがすごく嬉しかった。
宇治に来てくれた人にもっと楽しんでもらいたい。「宇治はこんないいところなのよ」っていうのをもっと伝えたい、というのがあってここまで進んで来た感じなので、ターニングポイントは「宇治に引っ越してきた事」しかも、本当にすぐ近くに沢山のいい場所がある所に引っ越してきた。っていうのが大きいかもしれないですね、はい。なかなかターニングポイントは何だったのか?って思ったことなかったんですけど、今思うと、ですね。
-なるほど。もう元々から本当に宇治に対しての想いというものがずっとあって、実際に自分でこの地に身を置いてから、というのが大きいんですね。
そうですね。また地元を離れてた期間も長かったので。これまで外国に1年住んだり、沖縄に2年居たりってフラフラとしてたりすると、外から見るとやっぱり京都の良さとか宇治の良さ「日本の伝統文化ってすごく良いな。やっぱり良いな。」とか思うようになってきたので。ずっと宇治にいてたらまた違ってたのかもしれないんですけれど、1回外に出て外から見た時に本当の良さも分かったと言うか、気付きがあったかな、と。ちょっとカッコいい言い方になりましたけど(笑)そんな感じがします。
-ありがとうございます。そろそろ質問も最後になるのですが、今後のインセンスキッチンでの後藤さんの明確なビジョンがあれば、また、今は明確と言えるほど解像度は高くないけど、こんな風になっていきたい等あれば、お聞かせいただいてもよろしいでしょうか?
今やっている事は引き続き続けていきたいですし、開業した際のお話をすると、開業した年が去年の4月でちょうどコロナの第一波の時だったんです。それまで準備期間に2年ぐらいあった時はそれはもう意気揚々と準備して「これはいける!」と。私自身が好きなものを作れた、私が欲しいと思ってたものができたので、多分「体験をやりたいと思う人もいるし、この商品を欲しいって思う人も沢山いるやろな」と思って意気揚々とね、4月を迎えたんですけど、知っての通りオリンピックは延期になり、結局その他もコロナでなかなか思うようにいかなかった。
まずは、この手作り体験をもっと沢山の人に体験してもらいたいですね。日本の観光客の方も海外の観光客の方も、これからもっと来ていただける、そうなると思っていますので、沢山体験していただいて、商品も日本だけじゃなく海外の方にも知ってもらって使ってもらって、「実際にその商品を作れる場所が京都の宇治にありますよ」っていうところから、最終的に宇治に来ていただけたら嬉しいなと思っています。
今は私自身が一人で全部してるんですけど、宇治で私と同じような事をしてもらう方もこれから募りたいですし、今、お香は宇治の特産品であるお抹茶で作っていますけれど、例えば和歌山の名産品でみかんがありますが、商品にはできないみかんをお香の原料として蘇らせる、というような思いがある方がおられましたら、私のノウハウをお伝えして地元の産業おこしに使ってもらったりと、各地でそういうのを作ってもらっても楽しそうかなと思っています。
-なるほど。ありがとうございます。ちょっとプライベートのこととかお聞きしてもいいでしょうか?今はお休みとかはあるんですか?
あってないようなものですね(笑)。きっちり決めてやればいいんですけど、メールは毎日チェックしたり、ちょっと隙間時間があれば物を作ったりとか、なかなか難しいですけどね。
-インタビュー前にちらっと陶芸体験とかもされているって言われてたのは、自分もちょっと興味があってということでしょうか?
そうですね。後、趣味ではじめたお香の世界だったんですけど、茶道も勉強したいですし香道の勉強も今滞ってまして。でも今はコロナですし、学びに行っても手袋をしてマスクをして、それをまた外したりっていうのがあるので、コロナが収まったら、それもしっかり勉強していきたいなと思っています。
後はね、最近よく娘が色々とやってまして、娘の影響でポケモンがちょっと好きになったというのがあるのと、後Among us(アモングアス)っていうゲーム知ってます?
-アモングアス?ですか?
人狼ゲームっていうのがありますよね。
-はい。人狼ゲーム、ありますね。
何か海外版の人狼ゲームらしいんですけど、娘の影響でそういうのにちょっとはまったりしてますね(笑)。と言ってもゲームをプレイするのではなく、あくまでそのゲームの実況動画を見るだけなんですけど。人狼ゲームはしたことあります?
-ありますあります。あるんですけど弱いです(笑)
相手の裏を読むとかそういうのですよね(笑)
-そうですそうです(笑)
私も、もともとゲームはあんまりできなかったんですけど、娘がまあ好きで。でもゲームはまだ解禁していなくてYouTubeのゲーム実況を見てるだけなんで、いつかは買ってやらないとって思うんですけど。それを見てると結構面白くてね。多分自分がやると鈍くさくてすぐやられるってパターンやと思うんですけど(笑)すみません全然関係ない話で(笑)
-いえ(笑)でも先程から色々お話を聞いていると、結構娘さんからの情報とか、そのようなことも多いのかなという風には感じたんですが。
そうですね。最初のおたべ体験も娘がいたから行きましたし、それが今の事業に繋がっていったので、まあ娘のおかげですかね。
-ご出産をきっかけに宇治にも移られていますし、そうかもしれませんね。本日は色々とお話を聞かせて頂きありがとうございました。
2021年9月13日(月)
取材・撮影 :藤川 拓哉
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今回、京都 宇治にある縣神社で取材させていただきました。お香つくり体験の日程はインセンスキッチンのSNS、HPをご確認ください。
INCENSE KITCHEN
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あなた自身がお香作りの体験講師として、そして事業としてアイデアや企画を考え、収益を得ていけるよう、INCENSE KITCHENがそのノウハウを継承したいと考えています。
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